
2025年夏、新潟県苗場スキー場の広大な斜面が、再びFUJI ROCK FESTIVAL'25の熱気と興奮に包まれました。3日間にわたり、国内外のトップアーティストが集い、会場は音と光と観客の熱狂で揺れ動きました。しかし2025年のFUJI ROCK FESTIVAL'25は、会場だけにとどまりません。その映像は丁寧に編集され、Amazon Primeを通じて世界中にリアルタイム配信されました。この大規模で複雑な制作現場を成立させるには、単にカメラを構えて音を拾うだけでは足りません。複数ステージの同時進行、複数日にわたる長時間運用、そして視聴者が期待する“世界基準の映像・音声クオリティ”を確保するための高度なロジスティクスとエンジニアリングが必要でした。
そして、その中心で高解像度映像とネットワークオーディオを橋渡しし、現場の運用方法そのものを変えたのが、エーディテクノのDante AV Ultra対応「DAV-01シリーズ」です。
Amazon Prime配信を担当した株式会社ヌーベルバーグの副社長・池田氏と営業部長・中江氏に、この機材と出会った経緯、選定理由、そして現場での効果について詳しく聞きました。
ヌーベルバーグは、東京にある最新鋭のLEDバーチャルプロダクションスタジオ「n00b.st」を運営し、地上波テレビ番組、音楽フェス、eスポーツ大会、企業イベントなど幅広い分野でライブ配信・技術制作を手掛けています。小規模でインパクトのある案件から、数日間にわたる国際的な大規模中継まで対応できるのが強みです。
設立当初からIPネットワークベースのワークフローを積極的に取り入れ、早い段階からDanteネットワークオーディオを導入。ヤマハ製Dante対応ミキサーやDante Domain Manager(DDM)を駆使し、複数スタジオを切り分けて運用するなど、「フルデジタル信号経路」を長年標準としてきました。
「スタジオを作るとき、アナログの信号経路は一切なくすと決めていました。入力から出力まで常にデジタルのまま。それが私たちの基準です」
— 池田氏
音声でその哲学を実現した次のステップは、映像伝送のDante化でした。


Dante AV Ultra導入前、映像と音声の結合や分離には複雑で手間のかかる手順が必要でした。
典型的な例としては次のような流れです。
この方法では、多数の1対1物理配線が発生し、コンバータなどの変換機器が多数必須。
各工程は遅延や信号劣化を招き、トラブルの原因にもなります。
「効率が悪いし、トラブルシュートも複雑になります。
Danteで統一できれば、運用はシンプルになり、品質も向上します」
— 池田氏
転機は社内から訪れました。
「同僚の筒井から“これ、良さそう”とメッセージが届いたのが最初です」と池田氏は振り返ります。
興味を持った二人はすぐに調査を開始し、エーディテクノのセミナーに参加。そこでDAV-01を目にします。
「その場で確信しました。これこそ探していた答えだと」
— 中江氏
DAV-01には、ヌーベルバーグの心を掴んだ明確な特徴がありました。

特に「4Kを1GbEで扱える」点は大きな魅力でした。
「これは単なるコスト削減じゃありません。どこにでも素早く展開できる柔軟性こそが最大の価値です。」
— 池田氏

Amazon Prime配信のためのFUJI ROCK FESTIVAL'25中継は、DAV-01にとって理想的かつ厳しい試験の場となりました。
複数日・複数ステージでの収録とライブ配信、各フィードの同期保持、さらに長時間稼働の安定性が求められます。
チームはリプレイマシンの3G-SDI出力をDAV-01でDante AV Ultraに変換し、既存の1GbEネットワークに投入。
音声はヤマハのDante対応ミキサーで編集後、本番系へ送出しました。
複数日にわたる音楽フェスの長時間運用でも安定動作を維持し、抜群の信頼性を示しました。
さらに、前面2インチモニターとオーディオメーターのリアルタイム表示も高く評価されています。
配信中、あるパフォーマンス中に予期せぬ音声ノイズが発生しました。通常ならケーブルや複数機器を順に確認するため、数分〜十数分のロスが発生する可能性があります。
しかしDAV-01では、内蔵LCDモニターを確認するだけでSDI入力側の問題だと即座に判明。リプレイマシンを再起動し、数分以内に復旧しました。
「このモニター機能がなければ、原因特定にもっと時間がかかっていたでしょう。ライブの現場では、この数分が命取りになります」 — 池田氏

DAV-01の低遅延性能は、音楽ゲームを含むeスポーツ分野でも絶大な価値を持ちます。
映像と音声のズレがわずかでも勝敗に影響する競技において、次のような構成が可能です。
「プレイヤーごとにDAV-01を配置すれば、分配器も遅延補正も不要です。運営の負担は大幅に減ります」— 池田氏
Dante AV Ultra DAV-01の導入により、完全なデジタル化とDanteでの統一が実現。ヌーベルバーグは、DAV-01の利点を他分野にも見出しています。
既存1GbEインフラで4K制作が可能になることは、展開スピード・機材削減・運用の柔軟性を飛躍的に向上させます。
「機器選定では、将来的にリモートプロダクションでも活用できることを見据える必要がありました。DAV-01は、まさに理想的な製品です。」(中江氏)
さらに、ヌーベルバーグでは、実験的に拠点間での長距離伝送にも取り組みを始めています。
例えば、FUJI ROCK FESTIVAL'25のような現場でも、以下のような構想を実現可能です。

苗場から東京スタジオへ音声と映像を伝送し、スタジオで編集後、マルチビュー画面として東京から苗場へ返送。苗場の現場では8msec未満という極めて低遅延で最終確認ができるほか、スタジオの音声系もDanteベースであるため、変換を介さずに一貫したワークフローコントロールが可能です。
「この実現に向けた課題としてネットワーク品質が安定していなければなりません。しかし既に映像伝送にも専用回線を用いているため、その課題は解決できます。」 — 池田氏
2025年夏には、高品質な専用回線を用いた拠点間伝送の検証を実施。綿密な検証を行いながら、今後の本格導入に向けた体制を整えていきます。
DAV-01によってヌーベルバーグが得た成果は以下の通りです。
「正直、他の現場にはあまり教えたくないくらいです(笑)。
でもDanteを使っているチームなら、これ以上のアップグレードはありません」
— 池田氏

ヌーベルバーグにとってDAV-01は単なる機材ではなく、次世代ライブ制作への基盤です。リモートプロダクションの普及、UHD/HDRワークフローの進化に伴い、柔軟で信頼性の高いAV-over-IPソリューションの需要は今後さらに高まります。
FUJI ROCK FESTIVAL'25での成功は、Dante AV Ultraがその要件を満たすことを実証しました。
音楽フェス、世界規模のeスポーツ、マルチ拠点企業イベント──IPで次の時代への扉を開く、この力を発揮するのは、あなたの現場かもしれません。

LEDバーチャルプロダクションスタジオ 「n00b.st」の運営と、IPを使用したネットワーク配信業を主軸として、地上波テレビ番組やイベントの収録、技術請負、スタジオ撮影など幅広く手掛ける日本有数の技術集団です。リモートプロダクション化についてもアンテナを張っており、常に最先端のサービスの提供を目指しています。

Dante AV Ultra DAV-01は、完全デジタル統合、精密な同期、リアルタイム可視化を1台で実現するソリューション。FUJI ROCK FESTIVAL'25での成功は、その可能性が音楽フェスだけでなく、スポーツ中継、ゲーム大会、企業イベント、教育配信といったあらゆる現場に広がることを示しています。
次にその力を手にするのは、あなたのチームかもしれません。
12G-SDI端子を搭載し、最大4K/60pの高画質映像を知覚できないレベルの超低遅延で伝送可能なDante AV Ultraソリューションを採用。放送設備やライブイベント、プロダクション用途に最適化されたハイエンドモデルで、ISE・InfoComm・IBCなど複数の国際展示会にて「Best of Show」を含む数々の賞を受賞しています。
本記事の英語版(Audinate公式サイト掲載)は以下よりご覧いただけます